カメの症例

カメの甲羅が赤くなっている場合の対処法【甲羅の感染症】

先日、珍しい種類のカメさんが来院されました。その名も「ブランディングガメ」(Emydoidea blandingii)という北米原産のカメです。

こちらのカメさん、甲羅(腹甲の一部)が赤くなっていて、様子がおかしいという主訴で来院されました。

このように、カメの甲羅が赤色になっている場合、カメ自身や甲羅が感染症に罹患している可能性があります。

原因

甲羅の感染症は飼育環境(温度、水の汚れ)が悪かったり、外傷がきっかけとなり発症することが多く、二次的に細菌感染や、真菌感染、寄生虫の感染が引き起こされます。この細菌感染や真菌感染は日和見感染であり、もともとカメ自身が持っている菌が、何等かの原因(若齢、不適切な食餌内容など)で免疫力が落ちた場合に増殖してしまい感染が広がっていきます。

症状

甲羅に感染がおこると、まず甲羅に赤色の部位が少し出てきます。さらに進行すると、赤色の浸出液が染み出てくるようになったり、甲羅の一部が脱落することもあります。

診断

視診、触診などから感染症を疑います。病変部位の細胞診を行い、細菌、真菌、原虫、寄生虫などが居ないか調べます。どのお薬が効くかを調べて(薬剤感受性試験)適したお薬を使います。

治療

まず、飼育環境(温度、水質、UV、餌の種類など)の見直しを行います。細菌や真菌感染が部分的な場合は、十分に甲羅の洗浄を行い、ポピドンヨード液を希釈して1日1、2回薬浴を行ったり、局所的に抗生物質の軟膏を塗布したり、水から定期的に1~2時間程度出して乾燥させたりします。

全身的に細菌感染が見られる場合は、薬浴に加えて、全身的な抗生物質の投与を行います。真菌感染の場合は、マラカイトグリーンを使った薬浴も効果があります。

今回のブランディングガメの場合、甲羅の赤くなっている部位のスメア検査(サンプルを採材して顕微鏡で調べる検査)を行ったところ、寄生虫が大量に検出されたため、抗寄生虫薬を投与することになりました。

さいごに

治療を行っても飼育環境に問題があると再発し易いため、再発予防のためにも環境(温度、UV、餌など)を見直してみてください。

垂水オアシス動物病院