泌尿生殖器科について

腎泌尿器科では、腎臓や膀胱など尿の生成や排出に関わる臓器を扱いますが、ダメージを受ける部位によりその症状は様々です。

ご自宅のわんちゃん、猫ちゃんにこういった症状は見られていませんか?

  • 水を沢山飲む
  • おしっこが臭い、赤い、濁る
  • 尿の回数が多い
  • 尿が出ない

尿に関連する症状が出ることもあれば、尿を生成する腎臓に障害が起こった場合は多飲多尿や全身状態の悪化などの症状が見られることもあり検査をしてはじめて泌尿器疾患と判明することもあります。

また尿管結石や尿道結石などの閉塞を伴う状況は救急疾患であり、治療が遅れると命に関わる場合もあります。当院では外科と内科の両面から治療を行える体制を整えております。

 

検査

〇問診と身体検査

おしっこの出方、回数や尿量、色、排尿痛の有無などを食欲や元気さに加えてお伺いします。

身体検査では脱水の程度、腹部の触診で腎臓の大きさや形、膀胱の拡大や緊張の有無を確認します。

〇血液検査

BUN(尿素窒素)、Cre(クレアチニン)をはじめ、カルシウムやリン、ナトリウム・カリウム・クロールなどのイオンバランス、CBC検査で貧血や脱水程度など、総合的に腎機能を評価していきます。

BUNやCreは食事や筋肉量の影響も受けますが、近年SDMAという新しい腎機能マーカーが使用できるようになりました。Creは腎機能が75%失われるまで上昇しないのに比べ、SDMAは腎機能が平均40%失われた時点で上昇することから、従来の腎機能マーカーと比較し早期に腎臓病を発見できるようになりました。

〇尿検査

腎機能が低下すると尿濃縮能低下による尿比重の低下や尿中へのタンパク質の漏出が起こります。当院ではヒト用ではなく、より正確な測定のために犬猫専用の尿比重計を使用しております。

尿PHの変化は膀胱結石の成因のひとつと考えられていますので、尿試験紙でPHを確認します。その他試験紙では、肉眼で見えない尿中の血を潜血反応の有無で、尿ビリルビンが陽性であれば肝疾患の疑い、尿糖や尿ケトンが陽性であれば糖尿病の可能性など様々な内臓疾患の検出にも有用です。更に尿を顕微鏡で確認することで、尿中の細菌や結晶、円柱、炎症細胞や腫瘍細胞などを検出することができます。

〇レントゲン検査

腎臓などの臓器の大きさや形、結石の有無を評価できます。必要に応じて造影剤を使用することで腎臓や尿管の構造、尿路の狭窄や断裂、膀胱の破裂の有無が分かります。

〇超音波検査

腎臓や膀胱の形態や内部構造を評価しますが、尿管や尿道、オスで前立腺、メスで子宮や卵巣の評価にも有用です。

〇血圧測定

高血圧が毛細血管のかたまりである腎臓の糸球体を障害すると、腎臓の血圧を調整する機能が低下し、水分やナトリウムが体内に貯まることで血液量が増えて更に血圧を上げる悪循環に陥ります。腎臓病の動物にとって高血圧のコントロールがとても大事になります。

 

泌尿器科の病気

◎尿管結石

尿を産生する腎臓と尿を貯める膀胱とを繋ぐ尿管が結石で閉塞する病気です。片側だけの閉塞の場合、食欲不振や元気消失、腹痛などの非特異的な症状ですので画像診断が重要になります。通常では尿管は細くエコー検査ではほぼ見えませんが、結石により拡張した尿管や水腎症などが認められます。内科と外科治療とがありますが、外科治療の場合閉塞した尿管とは別に腎臓と膀胱をバイパスする医療器具を使用することで、手術時間の短縮や再閉塞のリスクを減らすことができるようになりました。いずれにせよ、時間の経過につれ腎障害は進行しますので、早期の閉塞解除が望まれます。

◎膀胱炎・膀胱結石

膀胱炎になると血尿・頻尿・排尿困難・排尿痛などが見られますが、原因としては細菌感染や結石の存在、および特発性などが考えられます。膀胱炎は再発を繰り返しやすい病気であることから、糖尿病やクッシング症候群などの全身的な基礎疾患がないかも慎重に判定していく必要があります。膀胱結石は種類によっては溶解可能なものもあるため、尿検査や画像検査後に結果に応じて食餌療法で経過を見ていく場合もありますが、既に尿路閉塞を起こしていたり、結石の種類や大きさによっては外科治療が必要になる場合もあります。

◎慢性腎臓病

慢性腎臓病の発生率はわんちゃん・猫ちゃん共に加齢と共に増加しますが、症状としては、食欲不振・元気消失・多飲多尿などがあげられます。一度ダメージを受けた腎臓は元には戻らないため、早期発見と進行を遅らせるための対策が重要になります。慢性腎疾患を疑われた場合には病態を把握するため、血液検査や尿検査、画像診断などの各種検査に加えて、SDMAや尿蛋白/クレアチニン比や血圧測定の実施が望まれます。

進行に伴い末期には老廃物が排泄できないことによる尿毒症の状態になり、嘔吐や下血などの消化器症状を引き起こします。治療の目標としては、残っている腎機能を守りいかに症状を出さずに良好な状態を長く保っていけるかがカギとなってくると思います。