犬の症例

犬の便が出ない原因が骨盤内腫瘍だった症例

動物病院の先生からご紹介頂きまして便秘のワンちゃんが来院されたので、今回はこちらの「便が出ない」という症状で来院したワンちゃんの症例をご紹介します。


排便姿勢を取るのに便が出ない

飼い主様からは

  • 排便姿勢をとるが便が出ない

  • 何日も便が出ていない

  • いきんでいる様子がある

  • 平べったい便が出ている

という症状でご相談をいただきました。

犬の便秘は猫よりも少なくてあまりみられない症状ですが、原因はさまざまです。

例えば

  • 食事内容

  • 食欲が低下しており、そもそも便意を催す便がない

  • 水分不足

  • 運動不足

  • 薬の影響

などがあります。

犬の場合は多くは便秘はなく、ただ食欲不振で食べていないので便意が無いだけのことが多いのですが、しかし、まれに腫瘍や腫瘤が原因で排便できなくなることもあります。


検査で骨盤内腫瘤が見つかりました

直腸検査を行い、レントゲン検査や超音波検査、CT検査を行ったところ、骨盤の内部に腫瘤(しこり)が存在し、直腸を圧迫している状態でした。骨盤の内部は骨に囲まれたとても狭い空間です。そのため、この場所に腫瘤ができると便の通り道である直腸が圧迫され、排便ができなくなることがあります。

 

↑腫瘤が骨盤内に出来ており、直腸を圧迫しており便が出にくくなっています。

 

↑【画像図説】赤色囲み内が腫瘤、黄色が膀胱と尿道、オレンジ色が大腸と直腸。骨盤内で腫瘤が出来ているので直腸が圧迫されており、便が出にくくなっていました。


犬の骨盤内腫瘤

犬では骨盤内に次のような腫瘍が発生することがあります。

  • 平滑筋腫

  • 平滑筋肉腫

  • 肛門嚢腺癌

  • リンパ腫

  • 膣腫瘍

今回の症例でも、骨盤内腫瘤が直腸を圧迫して排便困難を起こしていました。

 

お尻から指を入れて触診してみると、奥の方に大きな腫瘤ができており、直腸が背側へ押されて腸が圧迫されたことで便が出にくくなっていました。

そこで、術前検査として、レントゲン検査や超音波検査、麻酔下にてCT検査や細胞診検査を実施し、それらの所見から未避妊の女の子の犬に見られることがある「平滑筋腫」を疑い、摘出手術をおこなうことになりました。


手術による腫瘤摘出

骨盤内には

  • 直腸

  • 尿道

  • 神経

  • 血管

など重要な組織が密集しています。

そのため、周囲の組織を慎重に確認しながら腫瘤を丁寧に剥離し摘出しました。

事前に尿道カテーテルを入れておき、慎重に剥離すると幸い腫瘤は摘出可能で、問題なく完全に取り除くことができました。

平滑筋腫は被膜に囲まれた腫瘍であり、未避妊の女の子の子宮や膣部にまれに見かけることが多い腫瘍で、開腹手術を行うか、お尻側を切開して摘出することができることが多いです。今回は骨盤をカットして摘出できるように念のため骨切りのソーやドリルなど準備していましたが、開腹手術のみで問題無く摘出可能でした。

↑摘出された骨盤内の腫瘤


手術後の経過

手術後は

  • 排便が正常に戻り

  • 食欲も回復

  • 元気に過ごしています

腫瘤による直腸の圧迫がなくなったことで、排便機能が改善しました。


犬の便秘で注意すべき症状

次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 排便姿勢を取るが便が出ない

  • 便が細くなる

  • 何日も便が出ない

  • 強くいきむ

  • お腹が張る

これらの症状の原因が腫瘍や腫瘤であることもあります。


まとめ

今回の症例では

骨盤内腫瘤 → 直腸圧迫 → 排便困難

という流れで症状が起きていました。

手術によって腫瘤を摘出することで排便は正常に戻り、現在は元気に回復しています。

犬の便秘が長く続く場合は、重大な病気が隠れている可能性もあります。

気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。

垂水オアシス動物病院

獣医師 井尻