猫の症例

猫の下顎骨折

下顎が骨折してしまったとの主訴で猫ちゃんが来院されました。

誤って踏んづけてしまったとのことで、お近くの動物病院さまで診て頂いて、レントゲン検査を実施されたところ、左下顎の顎関節付近の骨が骨折しているのが見つかったとのこと。整形外科を得意としている動物病院へ行った方が良いと勧められて、当院へ連れて来て頂いたということでした。 顎は顎でも口先に近い部位の骨折であれば診断や治療も比較的容易なのですが、今回は顎関節付近の骨が細かくバラバラになっていそうなため、現状を詳細に把握するためにCT検査を実施しました。頭の骨は立体的でレントゲン検査では左右の骨が重なり合ってしまい、骨折箇所の正確な把握が難しいため、CT検査は正確な診断にとても有効です。もし、術前にCT検査をしていなかったとしたら、手術中に出たとこ勝負になるためかなり苦労することになるのは間違いないため文明の利器の有難みを感じさせられます。

↑緑色線のところで左側の下顎の骨が折れています。顎関節の骨片の長さが5mm程度しか無く、プレート固定を行う際にスクリューを打つスペースが殆ど無い状況でした。

手術をしない保存療法では残念ながらうまく治る見込みが少ないため、海外から取り寄せた極小のプレートとスクリュー(径0.7mmスクリュー、スイス製)を活用して整復固定を実施しました。

↑左側の顎の骨が粉砕骨折しています

↑下顎骨を3枚のプレートで整復固定しました。スクリューを入れる部位が顎関節に非常に近いため難しい手術でしたが、工夫して何とか問題無く整復固定することができました。

手術後しばらくすると自身で食餌を摂れるようになったとのことで良かったです。術後は2~3か月間の骨癒合が完了するまでの間、流動食などの柔らかい食餌を食べて顎の骨に負荷が掛からないようにする必要があります。