犬の症例

膝蓋骨脱臼グレード4(柴犬)

柴犬のワンちゃんが左後肢を痛がるということで来院されました。飼い主さまからお話をお伺いすると、以前に別の動物病院さまにて膝蓋骨脱臼の整復手術を受けたものの、しばらくするとまた足を挙上するようになってしまったとのこと。

さっそく触診をさせて頂くと…、グレード4の膝蓋骨脱臼があり膝蓋骨を滑車溝に戻すことが全くできない状況になっていました。

グレード4の膝蓋骨脱臼は最重度のグレードであり、特に骨の変形が見られる場合には通常行われる手術(関節包の縫縮、脛骨粗面の転移、内側支帯の切離、滑車溝の造溝、関節外法の組み合わせ)だけでは治すことが出来ないケースがあり、治療の難易度が高いことが多いです。おそらくかなり重症の膝蓋骨脱臼だったため、残念ながら手術後に再脱臼してしまったのではないかと思われました。

このような場合は、手術前のレントゲン検査に加えて、骨の変形がどの程度なのかCT検査で評価して、変形している大腿骨を切って矯正する必要があるかどうかを事前に評価する必要があります。

今回のケースではCT検査の結果、大腿骨が変形してしまっており、一般的に行われる手術方法では膝蓋骨を正常な位置に戻すことが出来ない事が想定されました。

実際の手術中にも一般的な方法で膝蓋骨脱臼の整復を試みたものの、やはりどうやっても物理的に整復することが不可能だったため、手術前に精密な骨切り計画を立てシュミレーションを行ったうえで、大腿骨を切ってプレートで真っすぐに固定する骨切り手術を行い、無事に膝蓋骨脱臼を整復することが出来ました。

↑膝蓋骨脱臼が整復できました(大腿骨の矯正骨切り術、関節包の縫縮、脛骨粗面の転移、内側支帯の切離、滑車溝の造溝、関節外法の組み合わせ)

膝蓋骨脱臼は問題なく整復できたため、後はリハビリで機能回復することを期待して経過観察していくことになります。

よく頑張ってくれました。