犬の症例

犬の膝蓋骨脱臼(グレードⅣ)大腿骨遠位骨切り術について 

この頃は小型犬が多いこともあり、犬の膝蓋骨脱臼がよく見られるようになっています。今回治療をおこなったワンちゃんは、体重が1.5kgととても小柄なトイプードルちゃんでした。膝蓋骨脱臼は重症度によってグレード1~4に分類されており、今回の子は最重度(一番重症)のグレード4と診断しました。

↑向かって右側の肢(本人の左肢)の大腿骨と脛骨が重度に変形してしまっています

この子のようにレントゲン画像上で骨自体が変形しているように見える時は、レントゲンが撮影された体位によっては正常であっても骨が曲がったように見えてしまうこともあるため、詳しく状態を評価するためにCT検査を実施しました。当院ではCTスキャンを導入しており、骨の状態を詳しく調べることができます。

↑本人の左後肢(大腿骨)が変形していました

ここまで大腿骨の変形が重度だと、通常の膝蓋骨脱臼の手術では整復不可能なため、今回は「大腿骨遠位骨切り術 (DFO)」という方法で治療を行いました。グレード4の一部の犬、特により重度な膝蓋骨脱臼の犬では大腿骨の変形がかなり重度である場合があり、根本的に骨の変形矯正を行う必要があります。また、これらの手術には精密な術前計画が必要であり、四肢全体の CT スキャンを利用することが望ましいです。今回、手術前にはCTスキャンのデータを利用して3Dプリンタで実物大の骨格模型を造り、それを使って術前のシュミレーションを行いました。3Dプリンタの実物大骨格模型があると、術前にシュミレーションを行いプレートを事前に成型しておくことが出来るため、手術がスムーズで手術時間も短縮できるメリットがあります。

↑3プリンタで印刷した実物大骨格模型

今回手術を行った子は、体重が1.5kgととても小柄なトイプードルちゃんでした。骨の厚みが4mmしか無く、常に在庫しているプレートやスクリューではサイズが合わず手術不可能だったため、直径1mmのスクリューが使える特殊なプレートシステムを海外から取り寄せ準備を整えて手術を行いました。

↑大腿骨の骨切り矯正(ダブルプレート法)、内側関節包の切離、縫工筋・内側広筋の切離、関節外法を行いました。曲がっていた大腿骨が矯正され、膝蓋骨が整復できました。体格が小さくてスクリュー径が1mmと細いため繊細な手術が必要でした。術後は2~3か月程度で骨癒合するためその期間は安静が必要になります。

生まれつき大腿骨が変形しているような重度な膝蓋骨脱臼(グレード4)でも、脱臼を整復して治療できるケースもあるため詳しくは当院までご相談下さい。