カメの症例

カメの鼻水、涙が出る、呼吸音がする、眼の腫れの原因は?【カメの上部呼吸器疾患・鼻炎】

鼻から何か「ヒューヒュー、ピーピー」と変な呼吸音が聞こえるようになった、という主訴でカメが動物病院に連れて来られることがあります。このような場合は、なんらかの呼吸器疾患の可能性がありますので注意が必要になります。(カメの中でも呼吸器疾患は、水棲ガメには少なくリクガメに多くみられる

哺乳類と同じようにカメの呼吸器系は上部呼吸器と下部呼吸器に分類されます。上部呼吸器とは鼻周辺のことを言い、下部呼吸器は気管や肺などをいい、今回は上部呼吸器疾患(鼻炎)についてカメを診察している獣医師が解説してきます。

原因

感染性:細菌、マイコプラズマ、ウイルス、真菌 ⇔ほとんどの原因は感染性

非感染性:異物(床材のチップなど)、外傷

多くの場合、不適切な飼育管理(温度湿度、食餌内容、ケージ、ビタミンA不足、多頭飼育など)や、ストレス(温度の変化、栄養失調、繁殖期、冬眠など)などの免疫低下時に引き起こされる。

症状

上部呼吸器疾患になると、鼻水、流涙、眼周囲の腫れ、口内炎などが認められます。鼻水は感染を起こすと、白く濁るようになってきます。

症状が進行すると、鼻水や膿などで鼻孔が塞がってしまい呼吸が出来なくなるため、開口呼吸をしたり、呼吸をするために前足を動かしたり、頭を伸ばす様子が見られるようになってきます。

食欲の低下や活動性の低下が認められます。水棲ガメでは水中に潜れなくなったり、水中で傾いてしまったりすることもあります。

診断

問診(飼育環境、餌などの聞き取り)や身体検査を行い、上記の症状が認められれば上部呼吸器感染症を疑います。その後、鼻水の細胞診検査、細菌感受性検査(どの種類の抗生剤が効くかどうか調べる検査)、レントゲン検査、場合によってはCT検査などを実施していきます。当院にはCTスキャン装置があるため診断に利用することが出来ます。カメの状態によっては念のためレントゲン検査を実施して、肺炎になっていないか確認が必要です。

治療

まず飼育環境の見直しを行います。環境温度の設定はそれぞれの種類の至適温度の範囲で高めの温度を維持するようにします。細菌感受性試験の結果に基づいて、抗生剤を選択して全身投与(経口投与など)します。また、鼻腔洗浄を行ったり、ネブライザーを使って蒸気や薬剤を吸入することも有効です。

最後に

慢性化してこじらせないようにするために、鼻の症状が気になる場合は早めに動物病院へ受診させてあげて下さい。